2011年2月6日放送の「池上彰の世界を見に行く」で、
興味深い出来事が紹介されていました。
アフリカのマラウイという国で、マラウイのエジソンと言われている、
ウィリアム・カムクワンバさんの話です。
マラウイは「アフリカ全体が縮図になったような国」と言われていて、
世界最貧国のひとつに挙げられています。
エイズやマラリアの蔓延、貧困、孤児、
子供が教育をほとんど受けられない状況といった、
私達がイメージするようなアフリカの抱える問題がそのまま見られる国なんですね。
そんな国に生まれたら、どうやって改善したらよいのか?難しいところだと思うのですが、
この国で生まれたウィリアムさんは、少年の頃、
独学で風力発電を作って明かり一つない村に明かりを灯し、
この国に明るい未来を与えたんです!
どういう状況であれ、目標に向かって諦めずに頑張り続けることがいかに大切なのか、
改めて認識させられたので、ウィリアムさんのエピソードを紹介します。
マラウイは、中学に通わない子供がほとんど
The Wonderful Children of Malawi / khym54
マラウイでは、ほとんどの子供がまともな教育を受けていません。
教育を受けるよりも、家族と共に今日、明日の食料を手に入れるのに必死なんですね。
小学校は無料で教育を受けられるのですが、中学校から有料になります。
マラウイの国民の平均年収は推定で約3万円程度。
中学校の学費は1学期分だけで約5,500円もするのです。
これでは進学率が悪いのは当たり前ですよね。
ウィリアムさんの父親は、ウィリアムさんが7人兄弟の中で
一人だけ男の子だったということもあり、
中学に行かせたかったそうですが、
やはり経済的な理由で、1ヶ月で学費が払えなくなり、退学になったそうです。
ウィリアムさんはそういう環境で育ったんですね。
あらゆるものの仕組みに興味を示す、好奇心旺盛な少年
ウィリアムさんが他と違ったのは、好奇心旺盛だったということ。
ラジオの修理をしていて、そこから物の仕組みに興味を持つようになります。
それから何かものを見つけると、仕組みがどうなっているのか知りたくなり、
それを正確に説明できるような自分になりたいと思っていたそうです。
例えば、自転車のライトはなぜつくのか、
といったことに非常に興味を持っていて、父親に聞いたり、
学校の先生に聞いたりしていたそうです。
しかし、中学を途中で退学したこともあって、
一時は勉強が出来ないことに絶望しましたが、
学びたい気持ちが強く、自分で図書館通いを続けます。
その頃14歳ですが、
自分も同じことが勉強できる。
学校に通えなくてもみんなに遅れをとりたくない。とっていられない。
と考えていたそうです。
そのようにして図書館に通った結果、ある本の中で、
「運動エネルギーは自転車をこぐ人によって与えられます」
という説明を見つけ、自転車のライトはなぜつくのか、といったような疑問を解消していったそうです。
マラウイは元々イギリス領だったので、英語の本が多いのですが、
ウィリアムさんが学校に通っていた頃に習った英語は、日本の中学1~2年生程度。
そんな学力でも図書館に通い、書いていることでわからないことがあると、
図書館管理者の方に何度も何度も聞きにいったそうです。
その人が図書館にいないときは、なんとその人の家に行ってまで「この言葉は何?」と質問していたそうです。
そして、英語を習ったり、本を紹介してもらったりしていたんですね。
図書館には貸出記録が残っていて、どのような本を読んでいたのかを見てみると、
「基礎英語」「科学と発明」「解説 物理」「総合教科 科学」といったものを借りていたようです。
風力発電との出会い
そのようにして勉強している中、
ある本に出会ったそうです。
それが、「USING ENERGY(エネルギーの利用)」という本。
たまたま風力発電のことが載っていたんですね。
この本を読んで
電気が自由に使えるようになれば、
もっと人生が豊かになる!
と考えたそうです。
廃品置き場から材料集め
これは、ウィリアムさんが当時実際に書いた完成予想図です。
これをもとに材料を集めて、実験を試みます。
仕組みは、風で風車を回し、その力で自転車のタイヤが回り、
自転車のライトがつく仕組みと同じように、
"ダイナモ"という、ライトをつける際に使用する発電機を通じて、
風車の下で友人に持ってもらっている電球をつけようという実験です。
しかし、ウィリアムさんには材料を買うお金はありません。
そこで、廃品置き場に捨てられているものを利用しようと考えたのです。
普通の人は廃品置き場は捨てる場所ですが、
ウィリアムさんにとっては、ものの動く仕組みが手に取るようにわかる学びの場所だったんです。
トラクターのファンで風車の軸を作ったり、
ビールの王冠を潰して真ん中に穴をあけ、
ネジのワッシャーに利用したりと、捨てられたものを最大限に利用していました。
無知による嫌がらせ
Malawi 2008-142 / ScottGregoryPhotography
風車作りも順調に進んだわけでもありません。
物事がうまく進むと、他人から嫌がらせを受けることはよくあることです。
ウィリアムさんも例外ではありませんでした。
廃品置き場から部品を探していると、
「あいつらゴミあさりしてるぜ」と冷笑をあびたり、
「頭がおかしくなった」と言われたそうです。
中には、「マリファナを吸ってるんじゃないか?」
と言う人までいたんだそうです。
そしてさらに、
「雨が降らないのはこの変な建物のせいだ」
「この建物には呪いがかかっている」
と、作りかけの風車まで壊そうとする人まで現れたんです。
マラウイという国は、未だに呪術が信じられている国で、
呪いをかけるものだと思われるのは不思議ではなかったんですね。
しかしウィリアムさんは、誰か他の人ができたのだし、その人も人間なのだから自分もできるという強い確信を持っていたので、
そのような嫌がらせにも負けることなく、高さ5メートルにもなる風車を作り上げました。
集落で唯一の明かりが誕生!
5メートルの風車は風を捕まえ、電気をつける実験は成功!
右の写真は、実際に作られた風車です。
マスコミによる取材も受けたそうです。
今まで村には夜になると明かり一つなかったのですが、
ウィリアムさんの家は、今では普通に電気がついています。
風力発電だけでなく、太陽光発電や蓄電池もあります。
家族は、「電気のおかげで暗闇の中で食事を作らなくてすむようになった」
と語っていました。
現在ウィリアムさんはいろいろな方から支援を受け、
アメリカの大学に通っています。
そして学んだことを村に還元しています。
例えば、揚水設備を作って、村の人がきれいな水を飲めるようにしたり、
灌漑設備を作って、農作物に水をまけるようにしたおかげで、
今まで年1回の収穫だったものが、年3回に増えたりしたそうです。
好奇心を持って諦めないことの大切さ
日本人が勤勉だと言われたのも、今や昔の話。
最近は、学力も上海、韓国にも負けていますし、
ハーバード大に入学する日本人がゼロになった年も出てきています。
そして、韓国の学生が、竹島の問題について日本の学生と討論しようとしたところ、
日本の学生は何の知識もなくて、討論にすらならなかった・・・
というエピソードもあります。
それほど日本人が内向きになってきているんですね。
さらに海外では、日本人の「内向き」「草食系」と言われているけれど、
それは単に無気力で目標がないだけにしか見えない、と評価している人もいるくらいです。
日本人は、今こそこのような話から再び気づくことがあるのではないでしょうか?
ウィリアムさんはこんなことを言っていました。
嫌だったのは、学校にいかないと、やることがないから農民になるという選択をすること。
そのように農業を選択して、もしトウモロコシの値段が上がったりすれば、
また大きな災難に巻き込まれる。
私は人生の選択肢を2つ以上持っていたい。
そうすれば何をすべきで何をすべきでないか分かる。
このような主体性を持った考え方をする方は、
今の日本には少なくなっているように思えます。
日本とマラウイでは事情は違いますが、それは関係ありません。
今、先進国にいながら成長し続けている成功者たちも、
ウィリアムさんと同じようなことを言います。
いろいろなものに興味を持ち、自分の目標に向かって出来る限りの努力を持つ、
というのは、どんな国の人でもどんな状況でも意識しておくことですね^^