「学級崩壊」という言葉は最近耳にしないですが、実は2014年の調査によると、小学校の暴力行為発生件数は、過去最多なのだそうです。
また、いじめの認知件数も過去最多となっています。
実は、まともに授業が成立しない状態の学級はたくさんあるそうなのです。
それでもニュースにもならないのは、それだけ珍しいことでもなくなってしまっているということですね。
たくさんの先生たちが頑張っているのですが、なかなか減らないんです。
そんな状況をふまえて注目されているのが「学級崩壊立て直し人」と呼び名の高い菊池省三先生。
20年以上に渡り、様々な小学校で荒れたクラスを立て直してきた実績があります。
ケンカは日常茶飯事、女の子同士で髪の毛をハサミで切ったり、周りの子を傷つけたり、傷つけられたりといったような荒れたクラスが、お互いに尊重し合うクラスになったりなど、何度も学級を再生させているんですね。
菊池先生は元小学校教師で、33年間コミュニケーション重視の教育を行ってきました。
現在は公演活動などを行っています。
⇒菊池省三オフィシャルWEBサイト
先生の授業は、NHK 「プロフェッショナル 仕事の流儀」をはじめ、「世界一受けたい授業」などで取り上げられるほど注目を集めています。
そしてこのような著書も。
本のタイトルにありますが、先生は子供は言葉で育つと考えています。
今、褒める子育てというのが注目されていますが、先生の指導方法は、教師はもちろんのこと、子育て中の方にも参考になることがたくさんあります。
そして、子供だけでなく、大人にも使える方法です。
特に「褒めてばかりだと子供が図に乗らないか?」と心配している方は、先生のやり方を学んでみるとよいかもしれません^^
子供たちが荒れるのは自信がないから
先生は、子供たちが学級崩壊を起こすのは、自分に自信がないからと考えています。
「どうせ自分はできないから」
と、人の目を気にして攻撃的になるのです。
たとえ直接暴力に繋がるような行動はしなくても、やる気が出なかったり、めんどくさがったり、そういう状態になりがちな子も同じ理由です。
特に怒られることの多い子は、「どうせ自分は出来ない」と考えがち。
自分に自信がなくなり、投げやりになります。
逆に、人から褒められると、大きな喜びを実感し、自分に自身が持てるようになるんです。
うちの子は褒めるところがないって本当?
「褒める」ということは、「認める」ということに繋がります。
それだけ見ていてくれているんだという安心感を覚えるのです。
「うちの子は褒めるところがない」
という方がいます。しかしそれは、
子供を見て良い部分を見つけようと努力していないからではないか?
と先生はいいます。
人は良いことよりも悪いことに目がいきがちですし、大人目線でみると、子供がやったこと、できるようになったことは大したことがないかもしれません。
でも、小さなことでもよいので、褒めてあげると、子供たちは、驚くほど変化、成長するんですね。
そして、「世界一受けたい授業」で先生の授業を見たのですが、褒め方に注目すると、褒める部分を明確に褒めていました。
例えば小学5年生が書いたこの作文。
おせじにもきれいな字とは言えませんが、赤が付いているのは全部褒めている部分です。
- 一マス下げている
- 例を挙げている
- 「抽象→具体」の構成で書けている
- 漢字を使用している
- まとめがある
といったことが書かれています。
そして最後に、「君の頑張りがうれしいです。ありがとう!」とメッセージが。
このように明確に褒めるには、きちんと子供に向き合わなければできませんね。
スマホをいじりながら子供の言うことを中途半端に聞いていたり、ママ友とおしゃべりをしながら子供を見る、といった程度ではなかなか向き合えません><
もちろん、スマホをいじってはいけない、ということではないのですが、それとは別に子供の成長を探す時間を作ってみるのも良いかもしれません^^
先生が他の教師に指導していることですが、カメラを持ち歩くように勧めているのだそうです。
休み時間などに子供たちの行動で良いところを探しては写真を撮り、それを教室に貼ったり、クラス全員に発表したりします。
授業が成立しなくなる原因は、自分をちゃんと見てくれる人がいないと子供が感じてしまうことだと、先生は言います。
写真を撮って発表する、ということは、それだけ安心感を与えることでもあります。
褒めるのが苦手な人はどうする?
子供を褒めて育てたいけど、褒めるのが苦手、という方は多いと思います。
「うちの子は褒めるところがない」と思ってしまうのも、それが理由の一つなのかもしれません。
特に日本人は褒めるのが苦手な人が多いんですよね。
ではどのようにしたら褒め上手になれるのでしょう?
それは訓練するしかありません。
良いと思ったことは素直に口にしてみるのです。
そして、受身の姿勢で褒められる部分を見つけるのではなく、自分から良いところを探しに行くことで鍛えられます。
1日に3つ見つける、など、ノルマを課して日記につけるようにします。
そのように、まずは自分をけしかけるのが一番良いですね^^
褒めるところ探しは、最初は頭に汗をかくと思いますが、習慣にしているとだんだんコツがつかめるようになりますし、やっていくうちに家庭の環境が変わります。
子供の自尊心も鍛えられます。
先生のクラスで行っている取り組みの一つですが、先生は褒め言葉のシャワーを浴びせるということを毎日やっているそうです。
クラスの中から毎日一人の主人公を決め、その子に対し、クラス全員が褒め言葉のシャワーを浴びせるのです。
そうすることで、褒められる側は自分に自信が持てるようになり、褒める側も、普段から使う言葉が変わってきます。
積極的にクラスの友達の良いところを探すようになり、お互いを認め合うようになるのです。
これは学校のクラスでの話ですが、同じように、言葉で環境は良くも悪くもなることは家庭でも同じですね^^
また、先生は、1年のスタートの時に、クラスのみんなで「溢れさせたい言葉」「溢れさせたくない言葉」を決めるのだそうです。
具体的な言葉を挙げたあと、教室に貼ります。
子供たちは日常的にその言葉を意識するようになります。
良い言葉を使い、悪い言葉を減らす、それが学級崩壊の予防につながるのです。
それは家庭でも同じで、親が悪い言葉を避け、良い言葉を使うことは大事なんですね。
叱る時はきちんと叱る
褒める子育て、といっても、叱ってはいけないということではありません。
手をあげてはいけませんが、叱ることは重要なのです。
慣れ合うことと信頼されることは全く別のことなんです。
先生もいつもは穏やかにしていますが、叱る時は徹底的に叱るそうです。
子供の力だけでは、まっすぐ成長する方向に行くことはできないからです。
「自由を尊重する」のと「わがまま」とは違いますからね。
「啐啄(そったく)」という言葉があります。
雛鶏が産まれようとする場面を思い浮かべてください。
雛は殻の中からつついて音を立てます。
これを「啐」といいます。
そしてその時に親も殻の外からにつつきます。
これが「啄」です。
「啐」と「啄」を同時にすることで殻がやぶれ、雛がかえることができるのです。
これは、片方だけではダメなのです。
そのためにも先生は、教師らしい存在感で子供と向き合っています。
威厳を保ちつつ、優しさも満ち溢れる。
それは、褒めるときは褒め、叱る時は叱るということ。
とても難しいことですが、これが大事なんですね。
ユニークな役割から引きだす子供の責任感
先生の取り組みの中で、普通の学級ではやらない変わったものがあります。
それは、子供たちに「会社」を作らせるということ。
クラス内の係のことです^^
普通は保険係とか、図書係といった係が思い浮かぶと思いますが、先生のクラスでは、子供たちに自由に好きな係を作らせる、という工夫があります。
そして、「係」のことを「会社」と呼んでいます。
子供たちが作った「会社」にはユニークなものばかり。
例えば、ちょこっとボランティア会社、リクエストを聞いた実験をする実験会社、クイズを貼りだすクイズ会社といったものなどです。
このように自分たちで企画・実行して責任をもつことで、そういった意識が育つんですね
逆に学級崩壊のクラスは、係活動をいやいややったり、やりたくない子が多いそうです。
色々考えて皆の為にやる。
その一歩を踏み出せるようにするのが親や教師など周りの大人の役目というわけです。
先生が信頼関係を築くために大切にしていることは、子供たちが考えていることを毎日ノートに書かせることなのだそうです。
「成長ノート」と呼んでいましたが、先生は書いてくれたものを本気で読みます。
そうすることで、子供たちは誰にも言えない心のうちも書いてくれるのだとか。
コミュニケーションをとるからこそ、子供たちの良いところを見つけることができますし、信頼関係も築けるわけですね。