子供を叱ってもなかなか言うことを聞いてくれない、解ってくれない・・・
そういうことって良くありますよね^^
それはもしかしたら、伝え方が悪いのかもしれません。
子供と話をする時間をできるだけ多く取ろうと頑張っている方は多いと思います。
でも、きちんと伝わる話し方ができているかどうかを考えている人は少ないのではないでしょうか?
もしくは「自分は子供と濃い対話が十分にできている」と思い込んでいる人もいるかもしれません。
でもそれは、子供と言い争いになったり、子どもが心を閉ざしたりしてしまったりする場合は、対話が十分じゃないのに思い違いをしていると思います。
そういう「伝わる話し方」をテーマに書かれたのがこの本です。
心理学者で家族カウンセラーのポール・コールマンという人が書いた本です。
「さっさと行動しないとき」や「駄々をこねたとき」「子供同士のけんか」といった、日常にありそうなテーマについて、役に立つミニ知識と、伝わる話し方・伝わらない話し方の例と解説が書かれています。
コミュニケーションの6つのパターン
この本によると、ただ対話するだけでなく「うまく」対話するためには、計画性とある程度の経験が必要なのだそうです。
本を読んだからといって、いきなりコミュニケーションがうまくなるわけではありませんから、最初は計画を立てて、経験を積んで適切な伝え方を使い分けるということですね^^
そして、計画を立てる上で骨組みとなるのが、以下の6つのコミュニケーションパターンです。
- 教える(Teaching)
- 共感する(Empathizing)
- 交渉する(Negotiating)
- 命令する(Do's & don'ts)
- 激励する(Encouraging)
- 気持ちを伝える(Reporting)
この本ではこの6つを"TENDER"アプローチと呼んでいます。
状況に応じてこの6つを組み合わせて使い分けることで、子どもに伝わるコミュニケーションを取ることができます。
でも、「教える」や「命令する」ばかりだと対話の仕方がワンパターンになり、いつまで経っても伝わらないことになってしまいます。
教える(Teaching)
子供がいると、何かを教えない日はほぼありません。
大人が教えることが子供の経験になるので、成長する上で大切なコミュニケーションですね^^
なので、「教える」というコミュニケーションをしている人はたくさんいます。
でもそれがいつの間にか、お説教や小言、批判になっていることがあります。
そうなると子どもは耳をふさいでしまい、伝わらなくなります。
そして、子どもが感情的になっている時も、理屈で説明しても理解はできません。
そんな時に、理屈で言い聞かせようとしてもしょうがないので、他の方法でアプローチ(特に「共感」)が必要なんです。
【「教えること」のベストタイミング】
- 親子とも心配ごとがなく、いらいらしていないとき
- 子どもが穏やかに質問してきたとき
- 子どもがほかのことに気をとられていないとき
- 親が批判的になっていないとき
共感する(Empathizing)
子どもが怒ったり泣いたり、又は不安になっていたりと感情的になっている時に使いたいコミュニケーション方法が「共感」です。
子どもの気持ちに理解を示すということですね^^
ただし、それは口で言うのは簡単ですが、やってみるとかなり難しいです。
子どもは、親が「やってはいけない」と思っていることも平気でどんどんやってきます。
そんな時に、子どものやりたい「気持ち」は理解しつつも、やってはいけない「行為」については正してあげなければいけません。
「気持ち」と「行為」の区別が必要ですね。
しかし私達は、気持ちを理解せずにいきなり行為を叱ってしまいます。
親まで感情的になって怒っていると、ついつい子どもの気持ちをないがしろにし、理屈で「行為」の批判をしてしまうことになるわけです。
それだけ心にゆとりを持っていなければできないということですね。
また、子どもが緊張していたり、不安になっている時にも「共感」が生きてきます。
「大丈夫だよ!」
と激励するのは一見良さそうに思えますが、それよりも先に不安な気持ちを理解してあげるのが先です。
そうでないと、子どもは自分の不安な気持ちを否定されたように感じ、
「何も解らないくせに」
という思いを抱くわけです。
「共感」は最初から出来ないと思うので、意識して使っていき、経験を積む必要がありますね。
【「共感すること」のベストタイミング】
- 子どもが感情的になり、理屈に耳を貸そうとしないとき
- 問題の原因がわからないとき(子どもの本当の気持ちを聞きだすことができる)
- 感受性が高い子どもの場合
- 子どもに自分自身の感情を分析する力をつけたいとき
交渉する(Negotiating)
子どもが、自分のしたいことや欲しいものを求めてくることがあります。
「スマートフォンが欲しい」とか「門限を8時にして欲しい」といった感じですね^^
これは、与える・与えないどちらが良いとは限りませんが、いきなり与えるとか、有無を言わさず拒むよりも、まずは子どもとの話し合いに応じると、子どもにとって良い経験になります。
人と交渉するのは生きて行く上で大切ですからね^^
その際「責任」はどうするのかを話し合うようにすると良いでしょう。
「自由」には「責任」がつきものですし、子どもに責任を持たせることも大切です。
スマートフォンが欲しいなら、その月々の支払はどうするのかとか、宿題は何時までに終わらせるとか、その要求を承認した時に親が心配に思っていることをどうやって解決するのかを話し合ったり、条件を設けて制限したり話し合います。
子どもは、話し合いの中でどこで折り合いをつけるのか、といった交渉しながら考える力もつきます。
そして「交渉」は小さい子にも使うことで、我慢することや協力することを育みます。
使えるシーンは、親の都合で子どもに我慢させる場合などです。
親なら有無を言わさずに我慢させることもできますが、例えば子どもが遊んでいる最中に買い物に行かないといけなくなった場合、
「遊んでる最中なのに、買い物なんか行きたくないわよね。でも、なるべく早くすませるから。それにお店の中で文句を言わなかったら、夕飯にピザを作ってあげるわよ。」
といった交渉をして、約束を守らせていくことで、我慢することや協力することを覚えます。
ただこれは、
「後でアイスクリームをあげるから静かにしなさい!」
と、苦し紛れに子どもに物を与えることとは区別する必要があります。
そこを間違えると子どもは親にゆするようになりますし、物を与えないと頑張らなくなってしまいます。
上の場合は、子どもが「協力する」という状況だから、ごほうびを与えても良いのです。
【「交渉すること」のベストタイミング】
- 親がせっぱ詰まっていないとき
- 子どもに責任感をもたせたいとき
- 交渉において妥協するとはどういうことか、合意を守ったり破ったりするとどうなるかといったことを子どもに教えたいとき
命令する(Do's & don'ts)
モラルや安全に関わることには、問答無用でルールを守らせることが必要です。
例えば、子どもでもシートベルトを締めなければいけませんよね^^
命令する場合は、
「危ないからシートベルトした方がいいわよ」
と説明するのではなく、
「シートベルトしないと連れていかないよ」
と言い渡します。
説明は要らないんです。
説明すると、「大丈夫だよ」という言い訳に使われ、ルールが無視されます^^;
この場合、選択肢を与えているのではなくて、守らなければいけないことなので、理由を説明する必要はないんですね。
ただ、しつけなどで初めてルールを設ける場合、子どもがその意味をわからない時は説明しても良いでしょう。
でも、明らかに子どもも解っている場合、説明しなくても本当は解っていることなので、要らないですよね^^;
命令する場合も、「共感」を添えると後で気持ちを引きずらずにうまくいくことがあります。
【「命令すること」のベストタイミング】
- 子どもがほかのことに気をとられていないとき
- 子ども自身や周りの人の安全がかかっているとき
- 親の方針がはっきりしているとき
- 最後までルールを守らせる覚悟があるとき
激励する(Encouraging)
「激励」は「励ます」ということですが、ここではそれ以外にも「賞賛」や「慰め」も含まれます。
子どもが精神的に成長するためにはこの「激励」が不可欠です。
激励するということは、子どもに正しい行動を教えるということです。
正しい行動をして、親に激励されることで達成感を体験し、自信をつけていきます。
しかし親は、子どもの正しい行動を褒めずに、悪い行動を批判しがち^^;
褒めないということは、正しい行動を教えていないということ。
正しい行動を教えないと、何が正しいのか解らないので批判しても意味はありません。
激励する場合のコツは、激励だけに努めることです。
褒めた後に「でも○○はダメよ」と批判を入れたりすると、その激励の効果はなくなってしまいます。
【「命令すること」のベストタイミング】
- その場ですぐ
- できるだけ頻繁に
- 子どもが努力、自制心、思いやりを見せたとき
気持ちを伝える = 伝達 (Reporting)
普段のコミュニケーションの中で大部分を占めているのが「伝達」です。
こういうものがあります。
- 事実を伝える・・・(「今日はみんなでおばあちゃんの家にいきますよ」)
- あいさつ代わりの質問をする・・・(「学校はどうだった?」)
- 自分の意見を伝える・・・(「わたしは湖に行きたい」)
- 感情を表現する・・・(「○○にうんざりした」)
- 依頼をする・・・(「食器洗い機の中身を出してね」)
気をつけたいのは、上の5つのアプローチと混同しないことです。
他のアプローチ方法をとるべき時に、「伝達」が混ざってしまうと言いたいことが間違って伝わることがあります。
「車の中でケンカするの、ママ嫌いよ」
というと、表向きは「伝達」ですが、内心は「止めなさい」という「命令」です。
なのに、選択肢を与えるように聞こえてしまいます。
それでは子どもは混乱してしまって、親の権威も保てなくなるんです。
日本人はつい空気を読むことを子どもにも求めてしまいますが、そのような扱いをされて混乱している子どもを後で叱っても、何で叱られてのか理解できません。
「何度言ったらわかるの!」
というのは、そういうところから来てるのかもしれませんね^^;
6つのコミュニケーション方法を紹介しました。
実際のコミュニケーションではそれを組み合わせて使うのですが、これ一つずつでも使い分けたりのは難しいですよね^^;
使い方をコントロールできないこともあると思いますし、使っているつもりで使えていなかったりすることもあると思います。
正解も一つではないこともありますよね^^
なのでこの方法は、「絶対にこうしなければ・・・」というものではなく、「こういうアプローチもやってみたら?」というアドバイスのようなものだと思って、実践してみるくらいがちょうど良いかもしれません^^
本の中には色々なシチュエーションで、伝わる話し方・伝わらない話し方の例がたくさん出ていますので、参考にしてみることは出来ると思います。
私も
「この言い方は伝わらない言い方だったのか!」
というのがあって、勉強になりました^^
コミュニケーションって、難しいですね><